ボウリングは長年、オリンピック種目への採用を目指してきたが、これまでその道は厳しいものであった。東京2020大会では開催直前で落選、パリ2024大会では議論すら進まず、ロサンゼルス2028大会でもボウリングは採用されなかった。2032年ブリスベン大会も同様に除外され、オリンピックでの存在感は未だ実現していない。このようにボウリングは過去数十年、オリンピックへの「参加権」を得られず、ただ希望だけを膨らませる存在にとどまってきた。まさに「羊飼いの少年」のように、声だけが先走る状況であった。
近年、IOC(国際オリンピック委員会)は正式種目以外の追加種目に関して非常に厳格な審査を行っている。通常の人気競技では簡単に参入できないほどの高いハードルがある。ただし、開催国の組織委員会とIOCが協議の上で1大会限りの追加種目として選定する権限を持つ。これはあくまで「その大会限定」の措置であり、次回以降のオリンピックに自動的に反映されるわけではない。
2036年オリンピックとボウリングの関係
2036年のオリンピック開催地はアジア圏となる予定で、複数の国や都市が招致に名乗りを上げている。ただし、現時点ではボウリングが追加種目として選ばれるかどうかは不透明だ。関係者は「準備不足のまま期待だけ膨らませてはいけない」と警鐘を鳴らす。
現在、アジア圏ではカタール、インド、インドネシアなどが2036年オリンピック開催を目指している。特にカタールは2025年7月22日、IOCに正式に招致申請を表明。ここで注目すべきは、カタール国内にはボウリング場が多く整備されており、国際大会開催に対応可能な環境が整っている点だ。さらに、シェイク・タラール氏(IBF会長、カタール・ボウリング・フェデレーション会長)のリーダーシップの下、カタールはボウリングの普及と国際競技振興に力を入れており、この動きが2036年オリンピックでの追加種目採用に向けた後押しとなると期待されている。
アジア競技大会と2036年オリンピックへの条件
ボウリングは近年、アジア大会で苦戦を強いられている。2022年の中国・杭州大会では正式種目から外れ、2026年の日本・愛知/名古屋大会でも開催が見送られた。しかし、2030年カタール大会では復活が見込まれており、これは開催国カタールが強く開催を希望しているためだ。中東諸国の支援も厚く、この動きは2036年オリンピックでの採用可能性を押し上げている。
実際にオリンピック種目となるためには、開催国の組織委員会が追加種目としてボウリングを提案し、IOCがその人気度や施設整備状況、国際的な普及度を審査する必要がある。さらに、アジア大会など国際舞台での実績がプラス要素として働く。その意味で、2030年カタール大会での復活は2036年オリンピックに向けた重要な布石となるだろう。
まとめ
2036年オリンピックでボウリングが正式競技となる保証はどこにもない。これまで幾度となく夢を見ては破れてきた歴史を振り返れば、安易な期待はむしろ危険だとさえ言える。重要なのは「可能性があるかどうか」ではなく、「その時に向けていかに準備するか」であり、国際連盟や各国の競技団体が一丸となって現実的な戦略を描けるかが試されている。
その一方で、カタールをはじめとする中東諸国の積極的な動きや、2030年アジア大会での復活の兆しは希望の火を消さない要素となっている。夢物語で終わらせるのではなく、未来の世代に「ボウリングがオリンピックで輝いた瞬間」を見せるために、いまから地道な取り組みを積み重ねることこそが求められているのだ。