2025年7月に放送がスタートしたTVアニメ『Turkey!』は、ボウリングという珍しい題材に加え、戦国時代へのタイムスリップを融合させた斬新なストーリーで大きな話題を呼んだ。女子高生がボウリングを通じて仲間と絆を深めながら成長していく姿は、スポーツアニメの枠を超えて多くの視聴者を魅了した。
放送は9月24日に最終回を迎え、全話を通じて「ボウリングの新しい魅力を伝えた作品」としてアニメファンだけでなくボウリング業界からも注目された。SNSでは多くのプロボウラーが感想を投稿し、キャラクターのコスプレを披露する選手も現れるなど、二次的な盛り上がりを見せた。
これまでにない完全オリジナル作品として、どのように企画が立ち上がり、キャラクターや物語のアイデアが形になっていったのか。制作を担当したアニメ制作会社タツノコプロ、BAKKEN RECORDの工藤進監督と大松裕プロデューサーに、制作の裏側や作品に込めた思いを聞いた。

なぜボウリング?ゼロから挑んだ完全オリジナル企画
―漫画原作からアニメ化される作品が多い中、『Turkey!』は完全オリジナル作品です。ボウリングを題材にしようと思った理由を教えてください。
大松裕プロデューサー(下記大松P):オリジナルアニメではゼロから題材を考えますが、最初に頭に浮かんだのがボウリングでした。ボウリングをテーマにしたアニメはほとんど存在せず、新鮮で良い題材だと思ったからです。メジャースポーツではありませんが、ROUND1のような施設や多くのボウリング場が今もあって日本に根付いていますし、動きがシンプルで心理描写を入れやすい点もアニメ向きだと思いました。
―監督が本作に参加された経緯を教えてください。
工藤進監督(下記工藤K):最初のパイロット版映像を作った時点では別の作品を担当していました。しかし、大松プロデューサーからお声がけいただき、実際の制作に関わる段階で「ボウリングアニメが今までなかったこと」「戦国時代へのタイムスリップ要素を組み合わせようとしていたこと」に惹かれました。とても面白い企画だと思い、参加を決めました。
―第1話の冒頭は本格的なスポーツアニメの雰囲気でしたが、いきなり戦国時代へタイムスリップします。この設定はどのように生まれたのでしょうか。
大松P:オリジナルアニメは人気を得るのが難しく、単純なアイデアだけでは不十分だと感じました。サッカー、バドミントン、社交ダンスまでスポーツアニメは多い。女子高生とボウリングだけでは弱いと思い、強いフックが必要でした。「女子高生×ボウリング×タイムスリップ」という組み合わせなら面白いものになると考え、思い切って採用しました。

強烈な個性が光るキャラクターの魅力
―全キャラクターが個性的ですが、特に印象に残っている人物を教えてください。
工藤K:戦国時代のお姫様の1人、朱火(あけび)と、現代の利奈(りな)です。それぞれの生き様、境遇やドラマ性が強く、キャラクターとして非常に立ちやすい存在でした。
大松P:私は希(のぞみ)です。地方ヤンキー的属性がありつつ、筋を通す時は必ず通す。メンタルも安定していて、他のキャラが泣いている場面でも彼女だけは泣かない。その強さが魅力的でした。声優の天麻ゆうきさんは実際には礼儀正しい方ですが、役に真剣に向き合ってくれたおかげで素晴らしいキャラに仕上がりました。
―制作中に印象的だった出来事やハプニングがあれば教えてください。
工藤K:戦国時代の人々を演じるベテラン声優陣の迫力に圧倒されましたね。さすがの実力だと感じました。
大松P:お姫様役のベテラン声優5人が揃った時は感動的でした。また、オープニングに関するハプニングもありました。関係者との飲みの席で「お姫様たちが歌うバージョンも良いよね」という話になり、勢いで実現しました。9話のオープニングは当初の計画にはなく、現場チームの柔軟な発想と団結力から生まれたシリーズ最大のサプライズでした。

人をつなぐスポーツとしてのボウリングを伝えたい
―プロボウラー岩見彩乃選手がキャラクターのコスプレをするなど、業界からも注目されています。今後コラボの予定はありますか。
生崎(ポニーキャニオン/プロモーション担当):すでに「ボウルスターカップ」に音無麻衣役の声優、菱川花菜さんが出演させていただきました。今後はプロボウラーのみなさまと「Turkey!」という作品を絡めたボウリング大会などを開催できればと良いなと思っています。またアニメ放送前に、P★リーグさんとご一緒させていただき、「Turkey!賞」という企画も実施させていただきました。これはターキーを達成すると賞金がもらえる仕組みです。アニメ放送後も様々な形でボウリング業界と関わっていきたいです。
―アニメを通じて伝えたかったボウリングの魅力を教えてください。
大松P:ボウリングには「競技性」と「レジャー性」の2つの魅力があります。数字で競える競技性も面白いですが、『Turkey!』で強調したのはレジャーとして人と人を繋ぐ側面です。キャラクターがそれぞれ違う思いを抱えながらも、ボウリングで一つになる。その楽しさや心の壁を壊す力を伝えたいと思いました。このアニメをきっかけに「ボウリングって楽しい、またやりたい」と思ってもらえたなら、それが一番の恩返しです。
―お二人のボウリング経験について教えてください。
工藤K:もう20〜30年やっていないですね(笑)。
大松P:父がとても上手で、アベレージ180ほどありました。その影響でボウリングには良い思い出があります。結婚前には人間関係を深めるために夜ボウリングをしたり、タツノコプロでもここ何年かは忘年会で大会を開いたりしました。初心者でも楽しめるのが魅力です。
―近いうちに「Turkey!杯」を開催して、皆さんと一緒に投げたいですね。
生崎:面白そうなアイデアですね。ぜひ参考にさせていただきます。
『Turkey!』はボウリングを題材にしながら、スポーツアニメとしての熱さとファンタジー要素を兼ね備えた意欲作である。制作陣の熱意や遊び心から生まれたキャラクターたち、そして業界との積極的なコラボレーションが作品の魅力をさらに広げている。
アニメを通じてボウリングの楽しさや人と人をつなぐ力を伝えたいという思いは、確かに画面を通じて視聴者に届いた。最終回を終えてもなお、今後の展開や新たな広がりに期待が高まる作品である。