アメリカ最大のボウリング企業・Bowlero社(ボウレロ)に対する批判が、YouTube上で大きな注目を集めている。登録者10万人を超えるチャンネル『OneHandedBowling』が公開した動画が15万回以上再生され、同社が「ボウリングを破壊している」と訴える内容がファンの間で波紋を広げている。
動画ではまず、ボウレロが全米で350以上のボウリング場を買収し、家族経営の温かい雰囲気が残るセンターを次々と企業型の娯楽施設へと転換している現状を指摘した。かつて地域コミュニティの核だったボウリング場は、派手な照明、大音量の音楽、ゲームセンターや高価格設定のバーを備えた“エンタメ施設”へと姿を変え、競技ボウラーが求める環境から遠ざかっているという。
特に不満が集中しているのは、レーン整備の質や練習環境など、競技者が必要とする基本的な条件が軽視されている点だ。動画では「レーンオイルが毎回不安定」「メカニックが解雇され設備が悪化した」などの声が紹介され、SNS上ではボウレロに不満を抱くユーザーのコミュニティが複数存在することも明らかにされた。リーグが行われているペアに誕生日パーティーが割り込むなどの事例も取り上げられ、「競技者が排除されている」との批判が強まっている。
2019年にボウレロがPBA(プロボウラーズ協会)を買収した際には「大会数の増加と賞金アップ」を約束していたものの、動画では「むしろ大会数は減少し、賞金も物価に追いついていない」と指摘。豊富な資本を持つ企業の参入が競技の発展につながるという期待は裏切られ、プロボウラーの活動機会が減ったという見方も示された。
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ボウレロの成長がもたらす最大の懸念は、市場の独占化だ。買収によって地域の独立ボウリング場が姿を消すと、競技者はボウレロに順応するか、競技自体を諦めるしかなくなる。動画では「地域から選択肢が奪われ、コミュニティスポーツとしてのボウリングが失われつつある」と強い危機感を示した。
一方で、老朽化したセンターが閉館を免れたという側面もあるため、ボウレロの存在が“唯一の救い”となっている地域があることも事実だと動画は触れる。しかし全体としては「利益を優先し、スポーツとしてのボウリングを軽んじている」という批判が圧倒的に多い。
動画投稿者は最後に「今あるボウリング環境を大切にしなければ、数十年後にはこのスポーツそのものが姿を消してしまうかもしれない」と訴えて締めくくった。この問題提起は、多くのボウリングファンにとって無視できないテーマとなっている。