2025年10月31日から11月3日にかけて開催された『第47回STORMジャパンオープンボウリング選手権(ジャパンオープン)』で、堂々の優勝を果たした斎藤琢哉(伊勢原ボウリングセンター)。大会後、Bowling Agent(ボウリング・エージェント)はその快挙を成し遂げた斎藤に独占インタビューを行った。
頂点に立った実感を尋ねると、返ってきたのは意外なほど淡々とした言葉だった。準決勝では自身キャリア最高となる856点(3ゲーム)を記録し、圧巻のパフォーマンスで決勝へ。ところが本人は「投げている最中は驚くほど冷静だった」と振り返る。
「あの瞬間はきっと何かのゾーンに入っていたんだと思います」と王者は穏やかに微笑む。自然体で掴んだ勝利、その裏側にある思いを聞いた。

ジャパンオープン優勝の裏側
―改めて、ジャパンオープン優勝の感想を教えてください。
斎藤:優勝したい気持ちはいつもありますが、ジャパンオープンは特に難しく、正直意識すると負けるタイプなんです(笑)。
今回は予選で噛み合わない部分も多かったのですが、準決勝の途中からレーンと自分が噛み合いはじめて、“これ、いけるかも”という感覚になりました。気負わず自然体で投げられたのが良かったと思います。
ー準決勝前半のスコア856点という高スコアはキャリアハイとのことですが、手応えは?
斎藤:キャリアハイだと思うんですが、投げているときは意外と冷静でした。“出たね”くらいの感覚で、結果よりも投げることに集中していましたね。
ーアマチュア選手も多い大会でしたが、その点はどのように感じましたか?
斎藤:正直、“絶対に負けられない”という気持ちになるので、その分力んでしまう部分もあります。でも後半は相手を意識せず、自分の投球に集中できました。それが結果につながったと思います。

家族5人がプロボウラー!ボウリング一家としての誇りと家族の存在
ー今年はご家族全員がタイトルホルダーになりました。どんな気持ちでしたか?
斎藤:素直にすごいことだなと思います。父を含め家族5人全員がプロボウラーで、みんな努力しているのは近くで見てきました。でも“全員がタイトルホルダー”というのは、狙ってできるものではないので、ものすごく嬉しかったですね。
僕自身は家族の中で一番勝てていないとよく言われますけど(笑)、そのぶん刺激をもらっています。
ーボウリング一家として育ったことは、プロとしてプラスになっていますか?
斎藤:すごくプラスです。フォームや技術だけではなく、メンタルや姿勢、ボウリングとどう向き合うかを家族の背中から学んできました。勝っても驕らない、負けても腐らない…その空気の中で育ったのは本当に大きいです。

ウレタンボール問題とレーン環境の変化
ー左利きの選手にとって、ウレタンボールはどんな存在でしょうか?
斎藤:僕はもともとリアクティブの動きが好きなんです。でも去年までは左の選手がほとんどウレタンで、変化についていけなくて仕方なく合わせていました。今年はウレタンが減ったことで、久しぶりにリアクティブだけで投げられて本当に気持ちよかったです。
ーウレタンが混じるレーンはそんなに難しいのですか?
斎藤:はい。ウレタンが入ると“削れないライン”ができてしまって、リアクティブ勢は一気に苦しくなります。曲がらない・飛ばない・ポケットに集まらない、の三重苦。分かっていても対処できないほど難しいんです。
“左で一番”という言葉の意味
ー自信のYouTubeでも語っていた“左で一番を目指す”という言葉。一番の定義と目標を教えてください
斎藤:年間ポイントの1位はもちろんですが、今は“全日本選手権で勝つこと”が一番の目標です。5つのコンディションを全て戦い抜く総合力が問われる大会で、ここで勝つことこそ本当の実力だと思っています。左で一番、というのは“どんな状況でも勝てる左利きになりたい”という願いですね。

全日本選手権への意気込み
ー全日本選手権に向けた準備はいかがですか?
斎藤:正直まだ手応えがつかめていません。でもショート(30ft)でしっかり稼ぐことが重要だと思っています。ロングは苦手なので(笑)、とにかくイージーミスを減らし、丁寧に投げ切ることを意識しています。
ー特に注目してほしいポイントは?
斎藤:ショートと38ftでの戦いですね。ここは自分でも気持ちが入るので、集中力や粘りを見てほしいです。
ー最後に、ボウリングファンへメッセージをお願いします。
斎藤:ぜひ会場に足を運んで、ボウリングの熱気を感じてほしいです。僕もひとつひとつの投球を大切にして、応援してよかったと思ってもらえるプレーをしたいと思っています。これからも応援よろしくお願いします。
インタビューを通して伝わってきたのは、強さよりも“やさしさ”。どんな質問にもまっすぐに答え、気取らず飾らない言葉で語る姿に、多くのファンが惹かれている理由がよく分かった。
これから迎える全日本選手権でも、きっと変わらない自然体のボウリングを見せてくれるだろう。斎藤琢哉プロの活躍に、今後もあたたかい声援を送りたい。