2025年12月11日(木)から13日(土)にかけて、埼玉県・新狭山グランドボウルにて『HANDA CUP・第57回 全日本女子プロボウリング選手権大会』が開催された。本大会はJPBA今シーズン最終戦であり、女子プロボウラーにとって最高峰のタイトルを懸けた、まさに頂上決戦である。
その頂点に立ったのは、プロ2年目の新星・野仲美咲(56期・ココレーン/レジェンドスター)。若き才能が3日間にわたる過酷な戦いを投げ抜き、全日本初制覇 という最高の形で自身の名を刻んだ。
一方、悲願の全日本制覇を目指してきた寺下智香(47期・神戸六甲ボウル/サンブリッジ) は、またしてもあと一歩届かず準優勝。勝利目前まで迫りながらも、その壁を越えることはできなかった。
若き才能の台頭が、女子プロボウリング界に新時代の到来を強く印象づけた大会となった。
過酷な競技形式で求められた“本物の強さ”
今大会は、予選から準決勝まで全33ゲーム。30ft、38ft、47ft、55ft、42ftという5種類のオイルパターンが用意され、対応力、集中力、そして精神力のすべてが試される、全日本にふさわしいシビアな3日間となった。
その中で野仲は、予選各シリーズ終了時点で常に4位以内をキープする安定感を発揮。準決勝も2位で通過し、決勝ステップラダーへは4位で進出するなど、終始安定した戦いぶりを見せた。
一方、強烈な追い上げを見せたのが寺下智香である。準決勝9ゲームでは2,000ピン超えの猛追を披露し、決勝戦へは堂々のトップ通過。全日本初制覇への強い気迫を、その投球で示した。
決勝ステップラダーに進出した4人
決勝ステップラダーに駒を進めたのは、以下の4名。
- 1位通過:寺下智香(47期/神戸六甲ボウル・サンブリッジ)
- 2位通過:霜出佳奈(50期/サンスクエアボウル・ハイスポーツ)
- 3位通過:中島瑞葵(53期/フリー・ABS)
- 4位通過:野仲美咲(56期/ココレーン・レジェンドスター)
4位通過の野仲の前に立ちはだかるのは、いずれもタイトル経験豊富な実力者ばかりだった。
一球が明暗を分けた死闘、そして女神が微笑んだ瞬間
アベレージ女王・中島瑞葵との4位決定戦は、同ピンによるワンショットプレーオフへ。一球で勝敗が決する極限の状況で、野仲は見事に勝利をつかみ取った。敗れた中島が天を仰ぐ姿が、この一戦の重みを物語っていた。
続く霜出佳奈との3位決定戦ではハイスコアの打ち合いとなり、勝負は10フレーム2投目までもつれ込む激戦に。そして迎えた優勝決定戦の相手は、悲願の全日本制覇を目指す寺下智香だった。
再優勝決定戦にもつれ込む、気迫と気迫がぶつかり合う戦い。会場が静まり返る中、文字通り「最も多く全日本のゲームを投げ抜いた」野仲に、最後は勝利の女神が微笑んだ。
怒涛の4連勝。プロ2年目の若きヒロインが、ついに全日本の頂点へと駆け上がった瞬間だった。
「これがスタート」…涙とともに語った決意
優勝インタビューで野仲は今シーズンを振り返り、「あと少し、惜しかったねと言われ続ける展開が本当に苦しかった」と涙をにじませた。そのうえで、「この優勝をスタートにして、これからも頑張っていきたい」と前を向いた。
この優勝により、野仲は金枠ワッペンとJPBA永久A級ライセンスを獲得。来季は全日本覇者としてシード権を手にし、新たな立場でツアーに臨むことになる。
またしても届かなかった全日本。寺下智香の悔しさ
一方、優勝決定戦で敗れた寺下は、唇を噛みしめた。通算7勝を誇る実力者でありながら、全日本初制覇の夢は今年も叶わなかった。
昨年に続く全日本準優勝。それでも今季はしっかりと1勝を挙げ、かつての「力強い寺下智香」を印象づける一年でもあった。悔しさの中に確かな手応えを残し、視線はすでに次のシーズンを見据えている。
新星とベテラン、交差した全日本
若き新星・野仲美咲の誕生と、届かなかった寺下智香の悲願。全日本女子プロボウリング選手権は、勝者と敗者、両者の物語を鮮烈に刻み込んだ。
この3日間は、2025年女子プロボウリング界の終着点であり、同時に、新たな時代の始まりでもあった。