一見すると気軽なレジャーに思われがちなボウリング。しかし実際には、レーンに引かれたオイルの状態やボールの特性を読み取りながら戦う、極めて奥深いスポーツでもある。そんな“本当のボウリング”の複雑さと面白さを、驚くほど真剣に再現した作品が登場した。それが『PBAプロボウリング2026(PBA Pro Bowling 2026)』だ。
本作は、アメリカのプロボウラー協会(PBA)の公式ライセンスを受けたボウリングシミュレーションゲーム。派手な演出やカジュアルさを前面に押し出した作品が多い中で、本作はあくまで「競技としてのボウリング」を正面から描こうとしている点が特徴となっている。
正直に言えば、グラフィックやメニュー画面は最新のスポーツゲームと比べると素朴だ。キャラクターモデルやUIには、どこか2010年代を思わせる雰囲気もある。ただし、それは欠点というよりも、本作の性格を象徴する要素と言えるだろう。見た目以上に重視されているのは、内部のシミュレーションだ。
ゲーム内には100種類を超えるボウリングボールが登場し、素材、重量、表面加工、内部コアの形状といった違いが、実際の投球挙動に細かく反映されている。現実でボウリングをしている人であれば、「この球は走る」「これは手前で噛む」といった感覚が、そのままゲーム内でも再現されていることに気づくだろう。
さらに特筆すべきは、オイルパターンの表現だ。プロボウリングでは、レーンごとにオイルの引き方が異なり、その違いが攻略の鍵となる。本作では、そのオイルパターンが実名で登場するだけでなく、投球を重ねることでオイルが削られ、コンディションが変化していく様子まで再現されている。シリーズ後半になるにつれて、同じラインが通らなくなる感覚は、実戦経験者ほどリアルに感じられるはずだ。
操作方法は比較的シンプルで、スティック操作による助走、スイング、回転調整が基本となる。難解な操作を要求されることはないが、狙ったラインを再現するには集中力と理解が必要で、安易にストライクを量産できる作りではない。ここにも、本作が“アーケード寄り”ではなく“シミュレーション寄り”である理由が表れている。
メインとなるキャリアモードでは、地元リーグからスタートし、段階的に全米のプロ舞台へと進んでいく。スポンサー契約やブランド対抗戦、ラダートーナメントなど、実際のPBAツアーを意識した構成となっており、プロボウラーとして成長していく過程を追体験できる。
一方で、ストライクダービーやスペアチャレンジ、ダックピンやキャンドルピンといった変則ルールのモードも用意されており、競技理解を深めながら気分転換できる要素も揃っている。
PBAプロボウリング2026は、万人向けの派手なスポーツゲームではない。しかし、ボウリングという競技の本質を知っている人、あるいは「なぜプロの投球はあれほど曲がるのか」と疑問を持ったことがある人にとっては、非常に誠実で、味わい深い一本だ。
最新作らしい華やかさよりも、競技そのものへの敬意と理解を優先したこの作品は、静かに、しかし確実に“ボウリングの面白さ”を伝えてくれる。
なお本作は、日本では PC(Steam)/PlayStation 5/Xbox Series X|S で配信されている。UIは英語表記だが、操作自体は直感的で、ボウリング経験者であれば十分に楽しめる内容となっている。