男子プロボウリング界の最高峰タイトルを争う『HANDA CUP 第59回 全日本プロボウリング選手権大会(全日本選手権)』 が、埼玉県・新狭山グランドボウルで開催され、川添奨太(49期/ハイ・スポーツ社) が6年ぶりとなる優勝を果たした。これにより、全日本選手権通算7勝目を挙げ、史上最多タイ記録に並ぶとともに、プロ通算23勝目を達成した。
2025年シーズン最終戦の大舞台で川添が示したのは、単なる勝利数では測れない、長年のキャリアに裏打ちされた安定感と勝負強さだった。
5種のレーンと33ゲームが試した「全日本の真価」
今大会は、史上初めて5種類のレーンコンディションが採用され、最大33ゲームを投げ抜く過酷な競技形式で実施された。単発的な爆発力や勢いだけでは勝ち切ることは難しく、状況判断力や修正力、そして精神的な安定感が強く求められる、全日本選手権らしい舞台設定となった。
川添は、変化の大きいコンディションに対しても冷静に対応。レーンの変化を的確に読み取り、ボール選択やライン取りを含めた判断を積み重ねながら、着実に勝ち上がっていった。派手な連続ストライクに頼るのではなく、大崩れを避ける安定したスコアメイクを貫いたボウリングは、長丁場の大会においてその真価を発揮した。
本人が「デビュー以来一番調子が悪かった一年」と振り返るように、今シーズンは決して順調とは言えない状況が続いていた。それでも、シーズン最終戦である全日本選手権を制したという事実は、長年積み重ねてきた経験が、最も重要な局面で結果として結実することを明確に示した。
刻々と変わるレーンの中で主導権を握った川添の試合運び
決勝に近づくにつれてレーンコンディションは刻々と変化し、わずかな判断の違いがそのままスコアに反映される、緊張感の高い展開となった。そうした状況下でも川添は、無理にストライクを量産しにいく姿勢は見せず、確実なスペアメイクを軸に試合を組み立て、主導権を渡さなかった。
一方、若手勢の勢いある投球が会場を沸かせる場面も多く見られた。中でも内藤広人(61期/岩屋キャノンボウル・(株)ソシオジャパン)は安定したスコアリングで上位争いに食らいつき、優勝争いは終盤まで緊張感のあるものとなった。
攻め急がず、大崩れもしない。淡々とスコアを積み重ねていく。その戦い方こそが、全日本選手権に限らず、数々の大会で結果を残してきた川添奨太の“勝ちパターン”と言える。単発の勢いや流れに頼るのではなく、スコアを構築するために何を選択し、何を抑えるべきかを熟知している。長いキャリアの中で培われた経験が、終盤の局面で迷いのない判断を可能にしていた。

次代の主役へ、新人戦王者・内藤広人の挑戦
その川添の前に立ちはだかった『コロナワールドカップ2025プロボウリング男子新人戦』王者の内藤は、19歳という若さながら、予選から準決勝、そして決勝に至るまで、感情を大きく表に出さない落ち着いた投球で存在感を示した。
安定したフォームと再現性の高いショットは、キャリアの浅さを感じさせない完成度を誇り、「次代の主役候補」と呼ぶにふさわしい戦いぶりだった。最年少での全日本制覇という期待も背負ったが、その挑戦はあと一歩届かなかった。
それでも、この大舞台で積み重ねた経験は、今後のキャリアに大きな糧となるはずだ。新人戦を制し、全日本の頂点争いに加わった内藤の姿は、男子プロボウリング界の未来を鮮明に印象づけるものとなった。
王者・川添奨太と19歳の挑戦者。全日本が示した世代の交錯
6年ぶり7度目の全日本制覇を果たした川添奨太は、長年トップ戦線で培ってきた経験と判断力を改めて示した。一方で、その前に立ちはだかったのが、新人戦王者として今季頭角を現した内藤広人だった。
19歳の内藤は、予選から決勝まで安定した投球を続け、最年少優勝の期待を背負いながら堂々とした戦いぶりを披露。結果こそ届かなかったものの、全日本の大舞台で優勝争いを演じた経験は、今後のキャリアにとって大きな財産となる。
第59回全日本選手権大会は、勢いだけでは勝ち切れない競技の厳しさと、経験に裏打ちされた強さを改めて浮き彫りにした。同時に、若手世代が確実に力を伸ばし、トップ層へと近づいている現状も示された。
経験と若さが同じ舞台で交錯した今大会は、男子プロボウリング界の現在地と将来像を映し出す象徴的な一戦となった。全日本の歴史は、新たな世代を迎えながら、次の局面へと進みつつある。