考え、積み重ね、世界へ…井口遼太が語る「判断力」と成長の現在地【独占】

井口遼太 写真:ご本人提供

ボウリング・エージェントでは今回、昨シーズンに大きな飛躍を遂げたJPBA男子プロボウラー・井口遼太(MOTIV bowling product)に独占インタビューを行った。

ランキング14位。初めて手にしたシード権、そして全日本選手権4位入賞。数字だけを並べれば、昨シーズンの井口遼太は、まさに「飛躍の年」と呼ぶにふさわしい成績を残したと言える。

しかし、本人の言葉は決して結果に満足するものではなかった。アメリカ遠征から始まったシーズン、48ゲームを投げ抜いた経験、レーンと向き合い続けた時間。その一つひとつが、静かに、確実に積み重なっている。

試合中、何を基準に判断しているのか。なぜ、その道具を信頼するのか。そして、どこを目指して投げ続けているのか。

挑戦者としての視点を失わず、ストイックに自分を見つめ続ける井口遼太。今シーズン、2月にはPBAツアーへの挑戦も控える中で、その言葉からは、確かな覚悟と、揺るがないビジョンが浮かび上がってきた。


アメリカ遠征が変えた意識。48ゲームがもたらした確かな自信

ー昨シーズンを振り返って、率直な感想を教えてください。

井口:正直に言うと、すごく出来すぎたシーズンだったと思っています。ポイントランキング14位という結果は、シーズン前に想像していたよりもかなり良かったですし、初めてシード権を取れたことも大きな経験でした。ただ、運や巡り合わせに助けられた部分も多かったと感じています。

特にシーズン序盤、アメリカ遠征からスタートできたことが、自分の意識を大きく変えてくれました。国内の試合とは違う環境で、自分のボウリングがどこまで通用するのかを試せたことで、シーズン全体を通して「うまく投げられれば戦える」という実感を持って臨めたと思います。

ーアメリカ遠征も印象的でした。あの経験はどう活きていますか?

井口:ワールドシリーズ(PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリング)に出場して、48ゲームという長丁場を投げ切れたことは、技術面だけでなく精神的にも大きな収穫でした。4つほどの難しいパターンを投げる中で、自分のボウリングの「形」が少しずつ見えてきた感覚がありました。

特に印象的だったのは、レベルの高い選手と長いゲーム数で戦い、最終的にトータルピンで上回れた経験です。単発ではなく、積み重ねで結果を出せたことで、シーズンに向けた自信につながりました。

また、ケーゲルトレーニングセンターでフォームや考え方について直接話を聞けたのも大きかったです。プロになると、良い悪いの判断をしてくれる人が少なくなりますが、そこで明確な基準をもらえたことで、練習の方向性がはっきりしました。

ー昨シーズンで最も成長を感じた部分はどこでしょうか?

井口:一番はレーンコンディションへの対応力だと思います。昨シーズンは、外が薄く中が厚い、いわゆる“パックン”系のパターンが多く、自分の回転量や球質が比較的活きやすい年だったと分析しています。

その中で、ウレタンボールを長く使えたり、自分の強みを活かした組み立てができたのは大きかったです。ただ、それを「たまたま」とせず、なぜそうなったのかを自分なりに整理できたことが、成長につながったと感じています。


井口遼太 写真:ご本人提供

考えすぎないための準備。試合中の判断を支える“引き出し”

ー試合中、判断に迷わないために意識していることは?

井口:試合中に考えすぎないために、普段から「こうなったらこうする」という引き出しを作るようにしています。

もちろん想定外のことも起きますが、基準があると修正も早くなる。自分の中で“判断の軸”を持つことは、かなり大事にしています。

ー全日本選手権での戦いも印象的でした。ご自身ではどう振り返っていますか?

井口:難しいコンディションの中で、最後まで戦えたことは自信になりました。ただ、決勝のステップラダーでのスプリットは、今振り返ると完全に判断ミスだったと思っています。

感情的になって右側を狙ってしまいましたが、本来は確実に2本取りに行くべき場面でした。結果的に取れたから良かったものの、ああいう場面で冷静に判断できるかどうかが、今後さらに上に行くための課題だと感じています。

ー試合前や試合中に意識しているルーティンはありますか?

井口:本当に些細なことですが、水分と糖分の補給を細かく意識するようになりました。長時間投げていると、集中力が切れる原因が実はエネルギー不足だった、ということに気づいたんです。

予選中も1ゲームごとに少しずつ補給するようにしていて、昨シーズンは最後まで集中力を保てた感覚がありました。こういう地味な部分が、結果に少しずつ影響していると思います。

ー体づくりについてはどのように取り組んでいますか?

井口:井口:基本的には、試合の日以外はほぼ毎日ジムに通うようにしています。投球練習も含めると週6日は体を動かしていて、あえて完全に休む日を作るのは1日だけですね。

ジムでは下半身と体幹を中心に、投球の安定につながるメニューを継続しています。特別に重いことをするわけではなく、「続けられる強度」を意識しているのがポイントです。

全日本選手権のような長丁場でも、体に不安を感じることなく投げ切れたのは、そうした日々の積み重ねがあったからだと思います。派手さはありませんが、コンスタントに続けることを何より大事にしています。


意図をそのまま返してくれる存在。MOTIVボールへの信頼

ーMOTIVのボールについて、どんな印象を持っていますか?

井口:投げ手の意図を素直に返してくれるボールだと感じています。良いときも悪いときも、動きが分かりやすい。

「これで合っているのか、違うのか」が判断しやすいので、試合中の迷いが減るんですよね。そういう意味で、すごく信頼できるブランドだと思っています。

ーMOTIVのボールは、どんなボウラーに向いていると思いますか?

井口:どちらかというと、ボウリングを「考えながら投げたい人」に合うブランドだと思います。
競技志向の方はもちろんですが、これからレーンを読む力を身につけたい人や、
自分の投球でボールの動きを作っていきたいボウラーにも相性がいいですね。

ボールが全部やってくれるというより、投げ手の意図やミスも含めて、素直に結果として返ってくる。
使い続けることで理解が深まり、上達につながっていくブランドだと感じています。


井口遼太 写真:ご本人提供

PBAの舞台で結果を出すために。今シーズンに掲げる目標

ー今シーズンの目標を教えてください。

井口:まずはPBAツアーに参加して、賞金を獲得することが一つの目標です。2月にはプレイヤーズチャンピオンシップやミズーリクラシックに出場予定なので、その舞台でしっかり戦える自分を試したいです。

国内では、優勝争いに自然と名前が挙がる選手になることを目標にしています。「そろそろ優勝してもおかしくない」と思われる存在になれるよう、地に足をつけて積み重ねていきたいですね。

ー5年後のビジョン、どんな選手になっていたいですか?

井口:PBAツアーでシードを獲得し、タイトル争いに加われる選手になっていたいです。簡単な道ではないですが、そこを目指して今の一日一日があります。


結果が出たからこそ、見える課題がある。積み上げてきたものがあるからこそ、まだ足りない部分がはっきりと分かる。井口遼太の言葉には、そんな競技者としての誠実さが終始にじんでいた。

MOTIVという道具に対しても、語られたのは派手な評価ではない。投げ手の意図を受け止め、迷いを減らし、判断を助けてくれる存在。だからこそ信頼し、だからこそ使い続ける。その姿勢は、ボウリングに向き合う姿勢そのものと重なっている。

2月には、再び世界最高峰の舞台・PBAツアーが待っている。そこで求められるのは、結果以上に「どんな姿勢で投げ続けるか」だろう。

挑戦者であることを忘れず、しかし確実に前へ進む。昨シーズンの手応えを胸に、井口遼太は今シーズンも静かに、力強くレーンへと向かっていく。その一投一投が、次の景色へとつながっていくはずだ。

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