世界的ボウリング用品メーカーStorm Products社(下記ストーム)の最新技術を紹介する『STORM & ROTO-GRIP SPI イノベーションセミナー』が開催され、日本のボウリング業界関係者の注目を集めた。セミナーでは新設されたイノベーション部門の取り組みや、新製品『Transformer(トランスフォーマー)』など、次世代テクノロジーの方向性が紹介された。
セミナー終了後には、日本総代理店である株式会社ハイスポーツの担当者と、ストーム最高技術責任者(CTO)のハンク・ブーマーシャイン氏にインタビューを実施。ボウリング技術の進化や新部門設立の背景、日本市場への期待などについて語ってもらった。
ストームはこれまでも革新的な技術で世界のボウリング市場をリードしてきた企業だ。今回のセミナーでは、その挑戦がさらに新しい領域へ広がっていることが示され、日本のボウリング界にとっても大きな意味を持つ取り組みとなった。
ストームの挑戦が生む新技術に大きな期待
ー今回のセミナー開催に込められた想いや、日本のボウリング場関係者へ特に伝えたいポイントをお聞かせください。
株式会社ハイ・スポーツ(下記HI-SP):我々も日々、最新情報の収集と発信に努めておりますが、ボウリングの技術や理論は常に進化しており、独学だけでは補いきれない領域も存在します。今回のセミナーは、こうした「一歩踏み込んだ深い知識」を直接お伝えできる貴重な機会です。現状の知識に満足せず、より高度な情報を吸収したいと願う皆様にぜひご参加いただき、知見を深めていければと考えています。
ーストームが新設したイノベーション部門について、日本総代理店としてどのような期待を寄せていらっしゃいますか。
HI-SP:現状に甘んじることなく、常に追求し続けるストームの姿勢こそが、世界中のファンに支持される理由だと確信しています。日本総代理店として、この新部門がもたらす未知のテクノロジーや新たな驚きが、日本のユーザーにどう受け入れられ、ボウリング業界全体を活性化させてくれるのか、非常に大きな期待を寄せています。
ー新製品『トランスフォーマー』は新部門の象徴的モデルと伺っています。日本のレーンコンディションやボウラー層との相性について、どのようにご覧になっていますか。
HI-SP:トランスフォーマーをはじめ、近年のストーム製品は動きの大小にかかわらず非常にバリエーションが豊富です。日本のレーンコンディションでは、以前は使用時間の長い(安定感のある)ボールが主流でしたが、最近はあえて「動きを抑えたボール」の需要も高まっています。新部門の象徴である本作も、多様化する日本のボウラーのニーズや、繊細なレーンコンディションに柔軟に対応できるポテンシャルを秘めていると感じます。
対面セミナーが生む“本物の熱量”とファン拡大
ー今後発表予定とされるコーチング・育成分野の新テクノロジーは、日本市場にどのような可能性をもたらすとお考えでしょうか。
HI-SP:言語の壁(通訳)などの課題はありますが、最新のコーチング技術が導入されれば、日本の育成現場に大きな影響を与える可能性があります。テクノロジーをいかに日本の環境にアジャストさせ、ボウラーの皆様へ届けていくか。その展開手法を注視するとともに、弊社としても日本市場への最適化を模索していきたいと考えています。
ー今回の取り組みは、ボウリング場の活性化やファン層拡大にどのように結びつくと期待されていますか。
HI-SP:震災やコロナ禍を経て、対面でのセミナー開催は久しぶりとなります。デジタル化が進み、YouTube等で手軽に情報が得られる現代において、セミナーの意義を改めて自問自答することもありました。しかし、急な告知にもかかわらず多くの方からお申し込みをいただいた事実は、「本物の熱量」や「直接的な対話」が求められている証左だと痛感しております。この熱量を、単なる技術向上に留めず、ボウリングファン全体の拡大へと繋げていく所存です。
ー今後、日本市場においてハイスポーツ社としてどのようなビジョンを描いておられるか、差し支えない範囲でお聞かせください。
HI-SP:弊社は、単なる用品販売に留まらず、ボウリングの体験価値を最大化させる「ソリューション・パートナー」を目指します。ストームの革新的テクノロジーと、弊社が日本の現場で培った知見を融合させ、ボウラーの皆様にその進化を実感できる環境造りをするために、全国のボウリング場・プロショップの皆様と協力関係を築いた上で、業界全体の明るい未来を切り拓いてまいりたいと考えています。

ストームの技術革新を支えてきた25年、CTO就任への思い
ーこのたび最高技術責任者(CTO)に就任されましたが、今のお気持ちと、これまで25年間の歩みを振り返っての率直な思いをお聞かせください。
ハンク・ブーマーシャイン(下記ブーマーシャイン):この役職に任命いただき、大変光栄に思っています。ストーム社には26年近く在籍し、数々のイノベーションに携わり、その先頭に立ってきました。その間、開発チームには素晴らしいメンバーがたくさんいました。これからも、次世代のテクノロジーへと会社を導いていくことができることを光栄に思っています。
ー新設されたイノベーション部門は、従来の研究開発と何が最も違うのでしょうか。ご自身が最も挑戦したい領域はどこですか。
ブーマーシャイン:イノベーションとは、単にボール開発だけにとどまりません。この新しい部門は、ボウリングボールにとどまらず、その先へと発展していくことを目指しています。ですので、ボウラー、プロショップ、そしてコーチの皆様に役立つツールやプログラムの開発にも取り組んでいます。ボウリング業界に新たな技術をもたらすという挑戦にやりがいを感じています。
ートランスフォーマーに込めた思想や、従来モデルとの決定的な違いを教えてください。
ブーマーシャイン:トランスフォーマーは、トルクによって誘起されるコアの歳差運動(※)に着目しています。モーフウィングコアは、従来のどの設計よりもドリラーがプレーヤーに合わせてボールの動きを微調整することを可能にします。
※歳差運動:自転している物体の回転軸が、円を描くようにゆっくりと向きを変える現象。
ーAI技術やデータ活用が今後のキーワードになると感じます。ボウリングの未来像をどのように描いていますか。
ブーマーシャイン:AIは様々な面で役に立つでしょう。現時点では、コア設計にA.I.を活用していませんが、システムに入力するデータが増えれば、将来的にはこの技術を活用できるようになるかもしれません。
テクノロジーを積極的に受け入れる日本のボウリング市場
ー日本のボウリング市場や日本のボウラーに対して、どのような印象や可能性を感じていらっしゃいますか。
ブーマーシャイン:日本市場は常にテクノロジー主導型です。他の多くの市場よりも、日本では新しいテクノロジーが広く受け入れられてきました。日本のボウラーは歴史的に、他の市場よりも新しいテクノロジーに早く適応してきました。そのようなことからも、日本のボウラーは常に新たな知識や情報を求めていると感じています。
ー最後に、日本のボウリング場関係者や若いボウラーへメッセージをお願いします。
ブーマーシャイン:ボウリングは常に変化し続けるスポーツです。技術や用具のデザインはほんの一部に過ぎません。ここ数十年で、片手投げから両手投げへ等、フィジカル面では大きく変化しました。ボウリングの魅力は、生涯にわたって楽しめるスポーツであるということですので、若いボウラーの皆様には様々な変化を感じながら、永くボウリングを楽しんでもらえればと思います。また、若い方をはじめボウラーの皆様を支えるボウリング場の皆様にも敬意を表し、我々もそのお手伝いをさせていただければと思っています。
インタビューからは、ストームが単なるボール開発にとどまらず、コーチングやデータ活用など、ボウリング全体の進化を見据えた取り組みを進めている姿勢が浮かび上がった。新設されたイノベーション部門は、用具だけでなくボウラーやコーチ、プロショップを支える新たなツールの開発にも挑戦していくという。
また、日本市場についてブーマーシャイン氏は「新しいテクノロジーを受け入れる文化がある市場」と評価。岩田氏も、日本のレーンコンディションやボウラーの多様なニーズに対応する製品開発への期待を語り、ストームの新技術が日本のボウリング界にも新たな刺激をもたらす可能性を示した。
技術革新が続くボウリングの世界。その最前線に立つストームの挑戦は、ボウラーだけでなく、ボウリング場やプロショップ、そして業界全体の未来にも大きな影響を与えることになりそうだ。