ABS(アメリカンボウリングサービス)は、ボウリングボールの表面加工に新時代をもたらす画期的な
新製品 『 ION POWER S フィニシングコンパウンド 』 を、12月15日に発売する。
これまで主流だった油性の番手設定のないコンパウンドから全く発想を変え、97%水溶性で精密な番手仕上げを可能にした番手選択型の商品でボウリング業界に革命を起こすアイテムだ。
発売前に、開発メーカーの株式会社フェムテックの坂井大剛氏、販売代理店であるABS企画開発本部長・後藤謙二氏、テストを行ったJPBAプロボウラー井口遼太氏(MOTIVインターナショナル専属)の3名に話を聞いた。
番手設定のない粒が砕けて細かくなる従来方式からの脱却
現在、番手設定のないコンパウンドが市場の多くを占めるが、その理由の一つとして、研磨粒子が大きい状態から徐々に砕けて細かくなる「凝縮性」タイプを採用しているコンパウンドが多いことがある。
このような従来のコンパウンドの課題として、粒の砕け方が、どれだけ擦るか、どれほど力をかけるかといった作業条件に左右されやすく、施工者の技量や時間によって仕上がりが大きく変動してしまうのだ。そのため、表面加工における再現性が不安定になりやすく、また大半が油を多く含むコンパウンドのため、油膜が張ったように感じ、ボールの表面仕上がりが判断しにくいという弱点を抱えていた。
開発を担当した坂井氏は、この問題をこう指摘する。「誰が磨いても同じ結果にはならない。だからこそ“番手”で透明性と再現性を持って、選択できる仕組みが必要だった」
つまり、研粒が砕けるなどの理由のため、”番手設定のない従来方式”ではなく、“番手を基準にして狙った仕上がりを誰でも再現できる方式”へと置き換える発想こそが、この新コンパウンドの開発の出発点となったのである。
97%水溶性が可能にした“洗って磨ける均一仕上げ”!ボール表面加工の新基準が誕生
ABSの新コンパウンドは、その約97%を水溶性ベースで構成している。低い粘性で洗浄成分も含み、研磨粒子が均一な状態で分散されるため、番手が示す通りの仕上がりを安定して再現できることが最大の特長だ。摩耗しても粒子が変質しにくく、従来のように作業結果が施行者により左右されることも少ない。
また、水溶性ならではの利点として、洗浄成分でボールを洗い上げ、油膜が残らない仕上がりのため、ボール表面仕上がり確認時の視認性が向上。施工時に粉も出ず、使用したタオルも洗いやすいため、作業環境がクリーンに保てる点も新しい。
開発を担当した坂井氏は、こう語る。「水溶性にしたことで、洗浄と磨きを同時にでき、従来コンパウンドの弱点を一挙に解決できた」
水性性と緻密な砥粒設計による技術革新が、ボール表面加工の“新基準”を確立しつつある。
井口遼太が語る“中間番手の革命”!投球性能の変化が明確に表れる
MOTIV契約で世界的に活躍するプロボウラー井口遼太は、新コンパウンドのテストにおいて強い手応えを得たという。特に、サンディングとポリッシュの“中間”にあたる番手帯は、これまで最も扱いが難しい領域とされてきた。しかし、今回の水溶性コンパウンドでは、その曖昧だったゾーンに明確な差が生まれたと語る。
#500から#3500までを一通り試した井口は、こう評価した。「従来のコンパウンドと違って表面がすごくクリーンでボールが“キュキュッ”と良くGRIPする感覚がある。今まで再現が難しかった“キャッチしながら走る”動きを感じることが出来た」
長年曖昧になりがちだった“中間番手”に、はっきりとした表情を与えた。まさに井口が言う通り、“中間番手の革命”と言える体感だ。

“7番手ラインアップ”が生む、新しい実用価値
ABS後藤氏は今回の商品戦略をこう説明する。
「今回ABSが投入するION POWER S フィニシングコンパウンドは、IRON(アイロン)、BRASS(ブラス)、COPPER(カッパー)、SILVER(シルバー)、GOLD(ゴールド)、PLATINUM(プラチナ)、DIAMOND(ダイアモンド)という7種類のシリーズで構成され、番手は#500/#1000/#2000/#3500/#5000/#6500/#8000と、用途に応じて明確に使い分けができるラインアップになっています。さらに、SKID HOOKの#15,000は業界でも最も目が細かいレベルの特別仕様で、現段階ではこちらは非売品として位置付けています。
従来のコンパウンドは番手を非公開とするケースが多く、”何を選べばいいかわからない”という声が常に現場から上がっていました。そこで私たちは、あえて“完全公開”に踏み切るというアプローチを採用しました。これは業界内でも極めてレアな考え方です。
私自身、まずは7番手すべてを試していただき、番手ごとの表情の違いをぜひ体感してほしいと思っています。最終的に”自分にとっての答え”が必ず見つかるはずです。
性能差や感じ方は、投球スタイルやコンディションによって異なりますが、ビギナーからプロまで、
表面調整を自由に組み合わせられることこそが、このシリーズ最大の魅力です。
発売前にプロボウラーやプロショップへテスト使用を依頼しましたが、評価は非常に高いものでした。番手が明示されているため選択がしやすく、下地と番手の組み合わせによる可能性は無限大です。
水溶性ゆえの仕上がりの良さに加え、手磨きにも対応できるため、試合時の微調整や、練習後のトラックエリアの摩擦痕のメンテナンスにも即時対応ができます。また、チューブ型パッケージを採用することで、収納も容易で持ち運びやすく、場所を選ばず使える点も現場の声を反映した仕様です。
販売はまず「100g×7本セット」を中心に展開し、ユーザーが番手ごとの違いをしっかり理解・体感できるようにしています。今後は単品販売や業務用の大容量タイプも計画しており、ニーズに合わせて商品を展開していきます。さらに12月末までに購入されたショップ様には、初回販売特典として非売品の#15,000 “SKID HOOK”をプロモーションする仕組みもご用意しました。
こうした一連の取り組みを通じて、この新コンパウンドは、分かりやすさ・実用性・販売面の利便性を兼ね備えた“新しい標準”として、着実に存在感を高めつつあります」
ABSの97%水溶性の新コンパウンドは、長年ボール研磨の主流だった油性コンパウンドの弱点である仕上がりのばらつきを根本から見直し、再現性・操作性・クリーン性を高いレベルで両立させた。
均一粒子による透明性の高い番手設計、細かく番手選択可能な7種類のラインアップ、さらには#15,000という従来規格を超えたアプローチまで、随所に“次のステージ”を見据えた技術思想が感じられる。
これは単なる新製品の登場ではなく、ボウリングボール表面加工の常識を塗り替える革新的な提案だ。ABSが提示した新基準は、競技者・ショップのすべてに新たな選択肢と可能性をもたらし、ボウリングの未来を確実に押し広げていくことになるだろう。