io.LEAGUE(アイオーリーグ)2026シーズンが、1月12日に開幕。 従来のボウリング競技の枠を超え、団体戦・男女混合・地域密着型クラブという新たな価値を掲げるio.LEAGUEは、シーズンを重ねるごとに独自の存在感を高めてきた。その中核を担う一人が、プロボウラーであり、現在はマッチコミッショナーとしてリーグ運営に携わる井口直之氏だ。
io.LEAGUEの「トップリーグ構想」は2014年から存在しており、当初は井口氏自身も選手として構想の中心にいた存在だった。しかし引退を機に、日本プロボウリング協会(JPBA)の運営側へと転身。選手経験を生かしながら、リーグ全体の方向性や競技設計に関わる役割を担ってきた。
団体戦・男女混合という新たな競技フォーマット、そして「地域に根ざしたクラブチーム」という理念。井口氏がio.LEAGUEに見出した可能性は、単なる競技改革にとどまらず、ボウリングと社会との関係性そのものを問い直す挑戦でもあった。

団体戦・男女混合への共感が転機に…井口直之氏が運営側を選んだ理由
ー井口さんがio.LEAGUEに関わることになった経緯を教えてください。
井口直之氏(下記井口):僕は2019年まで現役のトーナメントプロボウラーでした。io.LEAGUEの「トップリーグ構想」は2014年からあり、当時は選手として「渋谷のチームを作ろう」という構想の中で、僕が選手の核としてピックアップされていました。
2019年に引退を決めた際、日本プロボウリング協会(JPBA)運営側として関わるようになったのが最初です。現在はマッチコミッショナーの立場で携わっています。
ー選手ではなく運営側として関わろうと思えた、賛同ポイントは何でしたか?
井口:大きく2点あります。 1点目は「団体戦」「男女混合」という発想です。卓球のミックスダブルスのような要素は想像できても、ボウリングでそれ以外のチーム戦を本格的に作るのは新しい挑戦だと感じました。
2点目は、ボウリングが社会から孤立しているように見える現状を変えたいという思いです。僕自身、そこを改善したくて現役を辞め、協会の内部に入る決意をしました。「地域に根ざしたクラブチームを作る」という構想は、その課題解決につながると感じました。
ー井口さんが「地域」を軸にしたい理由は何ですか?
井口:地域名があるだけで応援のしやすさ、入り込みやすさが全然違うと思っています。例えばチームジャパンを全国が応援する、高校野球で地元の学校を応援する、そういう感覚です。 ボウリングは社会との接点が弱くなりがちですが、地域クラブを軸にすれば、ボウリングファンだけでなく地域の人も巻き込める。Bリーグやサッカーが地域を巻き込み始めて成功した流れも参考になります。
僕自身、2011年からジュニア育成にも関わってきて、地域発の育成とプロが中心となる仕組みを作る必要性も強く感じています。

限られた条件の中で選んだ“土台づくり”という判断
ー立ち上げで最も難しかったことは?
井口:資金ですね。 ショーケース(2023年)から始まり、最初のシーズン(2024年)は演出にもこだわって進めました。ただ、スポンサーを集める力、魅力を伝える力、放映の力がボウリング業界全体としてまだ弱い中で、先に大きいものを作ると資金が続かない。 「いきなり100から始めると続かない」と痛感し、私がマッチコミッショナーとして、現状でできることの土台作りから始める方向に舵を切りました。まずは業界内での周知を整え、マイナスのない状態で基盤を作ることが重要だと考えています。
ー「立ち上げてよかった」と実感する瞬間はありますか?
井口:投球中です。io.LEAGUEは1人あたり最大8フレームしか投げないので、1投1投の比重が勝敗に直結します。一般のボウリングトーナメントでは“捨てフレーム”を作ることもありますが、それがほぼできない。 実際、試合後に緊張で泣く選手もいるほどで、「1フレームの重み」を全選手が強烈に感じながら投げています。この凄さをうまく見せられたら、本当に価値が伝わると思っていますし、選手の成長にもつながっていると思います。

団体戦だからこそ芽生えた“クラブを成立させる”覚悟
ー選手側に生まれた変化はありますか?
井口:ショーケースから参加してきた選手や招集された選手たちが、クラブチームを立ち上げるために主体的に努力し始めているのは大きな変化です。 プロボウラーはボウリングが上手でも経営が上手とは限らないので不安はありますが、「自分たちでクラブを成立させよう」という意志が芽生えたこと自体が成長だと感じています。団体戦だからこそ、その意識はより強くなると思います。
ー2026シーズンの注目ポイントを教えてください。
井口:川添奨太選手に注目していただきたい。モデルチームとして福岡で参加し、その後千葉の招集を経て、名古屋で「自分のクラブを立ち上げたい」と動いた。その覚悟が今シーズンの見どころです。
彼は出身が福岡で生活拠点は名古屋です。当初は彼をベースに福岡でチームができれば理想だと考え、モデルチームを福岡に用意しました。 ただモデルチームは協会がお金を払って作るものなので、モデルのまま継続する意味は薄い。
千葉から招集が続く中で福岡か名古屋かを考えた結果、所属ボウリング場や生活拠点から動きやすい名古屋で、本人がスポンサーを募り、BOWLSTAR(株式会社ボウルスター)も巻き込み、クラブを立ち上げました。彼が『キングピンス名古屋』オーナーです。

地域と社会を巻き込むリーグへ!井口直之氏が描くIo.LEAGUEの未来像
ー井口さんが思い描く、これからの理想のio.LEAGUE像は?
井口:まず地域・社会をもっと巻き込むことです。各クラブが地域活動(ボランティアなど)や交流企画を行い、社会とのつながりを作っていく必要があります。
放映面では、YouTube中心からCSチャンネル「スカイA」での生放送や番組化が進み、阪神ファンやゴルフファンなど、これまで届かなかった層にも届き始めています。他のCSからの問い合わせもあり、放映を広げるチャンスも感じています。将来的にはCSに限らず、別の形にも広げていける可能性があると思います。
また、ROUND1(ラウンドワン)さんにも、さまざまな企画でコラボレーションのご協力をいただいています。特に、ラウンドワンを訪れる一般来場者の方々を、ボウリングの新しいファンへとつなげていく取り組みについては、今後もボウリング業界の未来のために、引き続きお力をお貸しいただければと考えています。ボウリングを実際にプレーする方の多くがラウンドワンを利用しているからこそ、新規ファン獲得の入口として非常に大きな可能性を感じています。
ーレジャー層(まだ競技として深く興味がない層)を巻き込むには?
井口:ボウリングには「投げる楽しみ」と「見る楽しみ」の両方があるのが強みです。見るだけ・やるだけになりがちなスポーツが多い中で、両方できるスポーツはそこまで多くない。巻き込むチャンスはあります。
io.LEAGUEはチーム戦で地域性があり、テレビでたまたま「愛媛対東京」を見たら東京の人は自然と東京を応援する。そういう導線が作れると思います。 従来のボウリングは長くて伝えにくい面がありますが、io.LEAGUEは1試合1時間に区切ってコンパクトにしているので飽きずに見られる。そこが“見せる力”につながっていると感じています。
ーこれからio.LEAGUEを見る方へ、メッセージをお願いします。
井口:ボウリングで「1フレームの重み」をここまで見られる機会はなかなかありません。全てがキーポイントで、常にPK戦のように目を離せない。 カレントフレームスコアシステム(各フレームの得点がそのフレームの投球終了時点で確定する、シンプルでわかりやすいシステムです)を使っているので勝負どころも普段とは違う。映像で伝わる面白さはそこだと思っています。
io.LEAGUEが目指すのは、競技としての面白さと社会的価値を両立させるリーグの姿だ。1人最大8フレームという緊張感の高いフォーマットは、選手に「1フレームの重み」を強く意識させ、観る側にも勝負の緊迫感を伝えている。その環境が、選手の成長や意識変化を生み出していることは、井口氏の言葉からも明らかだ。
一方で、リーグはまだ発展途上にある。資金面や認知の課題と向き合いながら、「いきなり大きくしない」判断を下し、まずは業界内での基盤づくりを優先してきた。川添奨太選手のように、自らスポンサーを集め、クラブを立ち上げる動きが生まれ始めていることは、リーグが描く未来像への確かな一歩と言えるだろう。
地域性を軸に、観る人・投げる人・地域社会をつなぐio.LEAGUE。その可能性は、テレビや配信を通じて、これまでボウリングに縁のなかった層にも広がりつつある。井口氏が語る「PK戦のような緊張感」が、これからどれだけ多くの人の心をつかむのか。io.LEAGUEは今、競技と社会を結ぶ新しいステージに立っている。