2026年1月12日から16日までの5日間、京都・MKボウル上賀茂のVIPレーン会場で開催された『io.LEAGUE2026』。3年目を迎えた今大会は、観客席を設けた会場開催に加え、YouTubeでのライブ配信、CSスポーツチャンネル「スカイA」での生放映を通じて、多くのボウリングファンが熱戦を見守った。800シリーズやパーフェクトゲーム、逆転劇や接戦が次々と生まれ、団体戦ならではのドラマに満ちた、例年以上に盛大なリーグ戦となった。
その舞台で惜しくも第4位という結果に終わったのが、愛媛オレンジサンダースだ。結果だけを見れば悔しさの残るシーズン。しかし、5日間を通して会場に立ち続け、誰よりも大きな声で選手を鼓舞し、チームを支え続けたチームオーナである越智崇氏の姿は、強く印象に残った。
Bowling Agent(ボウリング・エージェント)では、io.LEAGUE2026を戦い終えた愛媛オレンジサンダースの越智崇オーナーにインタビューを実施。3年目だからこそ感じた準備の手応え、団体戦がもたらす重圧と喜び、そして「結果がすべて」と語りながらも、声を出し続けずにはいられなかった5日間について、その胸の内を率直に語ってもらった。
「今年ほど準備できた年はなかった…」万全の手応えと、それでも難しかった5日間
ーio.LEAGUEを終えて、今年の準備や手応え、そして5日間を通して感じた難しさやチームの雰囲気について、総括を教えてください。
越智崇氏(下記越智):3年目ということもあって、「今年ほど準備が万全にできた年はなかった」と思えるくらい、しっかり準備できました。なので、ある程度の自信もありましたね。ただ、生身の人間がする試合なので、結果的には難しかった…というのが正直な感想です。
5日間の戦いの間は会場にずっといて、チームの雰囲気は山下キャプテン(山下昌吾プロ)がうまく盛り上げてくれたおかげで、みんなが落ち込まないように周りを見ながら、和やかな空気のまま5日間戦えたと思います。
ーオレンジサンダースが4位という結果に終わったことについて、オーナーとしての率直な受け止めと、要因の捉え方、そしてチームの雰囲気や周囲からの評価を教えてください。
越智:4位という結果は、オーナーとして当然納得できるものではないです。プロスポーツなので「結果がすべて」ですし、正直納得しづらい。というのが本音ですね。
原因については今も考えているんですが、まだはっきり答えが出せない部分もあります。とはいえ、私達のチームは声も出るしチームワークもあるタイプなので、そこは常に追求していきたいですね。
ー5日間の戦いに向けて、オレンジサンダースはどんなサポート体制を整えたのでしょうか?
越智:今回は、ボールの表面加工などをサポートしてもらう為に河津亨至プロを招聘しました。さらに、ファイテン株式会社の代理店をされてるファイルドリラックスの中野さんにも入っていただいて、体のケアは別で担当をつける形にしました。
そうした「チームらしくサポートメンバーがいて、ちゃんと支えられている」という形を作れたのは良かったですね。実際にそれがうまく回っているのを見て、準備した側としても「間違いじゃなかったな」と思えました。こういう体のケアまで考えてやっているのは、おそらく「愛媛だけ」だと思います。
ー5日間の長丁場を乗り切る中で、メンタル面はどう支え合い、選手たちは何を得たと思いますか?また、オーナーご自身が感じた緊張感や応援の熱量についても教えてください。
越智:5日間の長丁場は、やっぱり精神的にも削られます。結果が悪くなるとチーム内の雰囲気は正直上がりづらいんですが、選手同士で食事に行くなどして、落ち込まずに前を向こうとしていました。
現場にいる私も「みんなで頑張ろうぜ」という空気を大事にしていました。誰かだけが落ちるのではなくて、投げていない時間の使い方で「みんなで頑張ろう」をうまく回していたと思います。
得たものとしては、個人競技が基本の中で、団体戦がプロになってからは初めての方がほとんどで、感情が高ぶったときに「こんなに気持ちが動くんだ」と感じた、という話もありました。
普段は冷静な人でも感極まって泣きそうになるくらい、通常のプロの試合ではなかなかない感情の起伏が、みんなに起きていたと思います。
さらに、io.LEAGUE経験者は「必ず強くなる」とよく言われますが、あれだけ注目される中で投げる経験って、なかなかできないんですよね。
ちなみに私は応援の声もめちゃめちゃ出してました(笑)。映像越しでも、山下プロがプレーでも声でも毎試合全力で盛り上げていたのが伝わってきた、という声もありました。

まだ3年目、だから伸びしろがある。運営への手応えと“もっと良くなる”確信
ーオーナー目線で、io.LEAGUEの運営面や将来像はどう見えていますか?
越智:運営面については、まだ3年目なので「全部できている」とは思っていません。だからこそ、1年1年しっかり良くしていくことが大事ですし、まだまだやれることも可能性もある。もっと良くなると思っています。
将来像としては、立ち上げ当初に「愛媛は愛媛、大阪は大阪にいて、ネットで対戦する」という構想がありました。今は一箇所に集中して経費を下げる狙いもあると思いますが、10年後ぐらいにはチーム数も増えて、各チームが現地にいて対戦する“元の形”に近づけていけたらいいなと思っています。
ーオレンジサンダースを立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?
越智:立ち上げのきっかけは、3年半ほど前、とある大会で「io.LEAGUEをやろうと思う」という話を聞いたことでした。
私自身、「人生に1回はボウリング界で仕事がしたい」という夢があったので、「これはやるしかないな」と思ったんです。さらに、野球のドラフトみたいな形じゃなくて、自分で人を選んでドリームチームを組めるのがすごく楽しい。そこも始める上で大きな動機になりましたね。
ーチーム作りで一番大切にしていることは何ですか?
越智:チーム作りで一番大切にしているのは、「チームワークのバランスを崩さないこと」です。
人間なので好き嫌いもありますし、AさんはBさんを良く思っていても、BさんはAさんが苦手…みたいなこともよくありますよね。だからこそ、「混ぜるな危険」は避けるようにしていて、そういう関係性も見ながら、チームワークを保てるメンバーを選んでいるつもりです。
ーチーム立ち上げで最初に声をかけたプロは誰でしたか?
越智:最初に声をかけたのは、山下昌吾プロです。群馬の大会でio.LEAGUEの話を聞いて、「キャプテンを誰にするか」と考えたときに、もう「山下プロしかありえない」と思いました。なので、話を聞いて5分もしないうちに「キャプテンとして来てくれないか」と口説きましたね。
「山下プロがキャプテンとして来ていただけないなら、チームは作りませんからね」と言ったくらいで、ある意味“脅し”みたいな感じですけど(笑)、それくらい本気でした。
ー今後の活動予定(イベントなど)を教えてください。
越智:活動としては、毎月1回、愛媛でイベント(チャレンジマッチ)をやっています。
また、グリコ(Glicoセブンティーンアイス杯)が山形の方でやると聞いていて、そのタイミングでio.LEAGUEのイベントをやりたいという話も協会側から出ているので、何かしらイベントがあるんだろうなと思っています。
団体戦だから生まれる“新鮮さ”。観戦者も選手も増えるio.LEAGUEの魅力
ー個人競技のボウリングで「団体戦=io.LEAGUE」が生む反応や価値は?
越智:毎年、観戦してくれる方が少しずつ増えてきていると感じます。個人競技のボウリングにおいて、プロの団体戦は今のところまだ珍しいので、お客さんからも「新鮮だよね」「いいよね」と言ってもらえます。
プロ側も、アマチュア時代に団体戦を経験してきた方が多いので、「懐かしい」とか「プロになってこういうことができるのはありがたい」という声も聞きますし、周りからも「新鮮」という反応が多いですね。
ーこれからio.LEAGUEに関わる企業・スポンサーへ、伝えたいことはありますか?
越智:思うことは、やっぱり「覚悟」が一番大事だと思います。ただ「やろう」ではなくて、初志貫徹じゃないですけど、やり切る覚悟が必要です。
お金は運営の仕方次第で安くも高くもできますが、本質はお金の問題というより、やり切る覚悟のほうが大きいですね。
運営側もまだ3年目で不完全な部分もありますし、ルール面などで衝突が起きることもあります。でも人間がやることなので、完璧なんてありえない。だからこそ、意見は言いつつも我慢して続ける覚悟は必要だと思っています。
ーio.LEAGUEがボウリング界にもたらす可能性をどう考えていますか?
越智:io.LEAGUEがプロボウリング界にもたらす可能性としては、ボウリング場が少しずつ減っていて、人口も減っている中で、ボウリング人口のキャパ自体は下がっていく前提があると思っています。その上で、ボウリング人口を増やすこと、そしてボウリングを地域密着型にしていくことが、io.LEAGUEの大きなコンセプトだと思います。
最終的には、愛媛や大阪などそれぞれの地域で、ボウリングを通じて社会貢献のようなことができたらいい。さらに将来的には、野球やサッカーのように「地域名があって、その地域を応援する」形、つまり地域の代表として応援されるチームになっていければいいな、というビジョンです。
4位という結果に、越智オーナーは決して満足していない。だからこそ、その言葉の一つひとつには悔しさと同時に、次を見据える強い意志が込められていた。チームを支えるための準備、選手同士の関係性への配慮、そして何より、現場で声を出し続けるという姿勢。そのすべてが、愛媛オレンジサンダースというチームの「らしさ」を形作っている。
io.LEAGUEは、まだ完成形ではない。だからこそ、続ける覚悟を持つ人間が関わり、試行錯誤を重ねながら前に進んでいく。その中心に、地域とボウリング界の未来を本気で思い描くオーナーの存在がある。
団体戦だからこそ生まれる感情の高ぶりと、チームで戦う価値。その最前線に立ち続ける越智オーナーと愛媛オレンジサンダースの挑戦は、これからもio.LEAGUEとともに続いていく。