アメリカボウリング協会(USBC)は2026年7月、低吸油性ボールの硬度に関する大規模な調査結果をまとめた「硬度フィールドテスト研究報告書」を公開した。今回の調査は、2025年から導入された新たな硬度基準が実際の競技現場でどのような影響を与えているのかを検証する目的で行われたものだ。
近年、ボウリング界ではウレタンボールを中心とした「硬度問題」が大きな議論となっている。製造時には規定を満たしていたボールが、使用を重ねることで徐々に柔らかくなる可能性が指摘されており、USBCは今後のルール整備に向けて大規模なデータ収集を進めてきた。
2,600個以上のボールを調査 過去最大規模のデータ収集
今回の調査は、チームUSAトライアル、シニアクイーンズ、全米女子選手権、全米オープン選手権、シニアマスターズなど、2026年に開催された7大会を対象に実施された。USBCによれば、これまでに2,600個以上のボールのデータが収集されており、過去最大規模のフィールドテストとなった。
その中でも大半を占めたのが全米オープン選手権で、全体の92%にあたる2,514回の測定が行われた。対象となったシリアル番号は2,043種類に及び、極めて大規模な検証だったことが分かる。
「78D基準」のボールは本当に問題ないのか
現在、USBCでは低吸油性ボールについて、製造時の硬度を「78D以上」とする規定を採用している。
調査の結果、78D基準で製造されたボールの大半は、実際の大会会場でも73D以上の硬度を維持していた。しかし一方で、約1.1%にあたる23個のボールが、競技現場で73Dを下回っていたことが明らかになった。
数字だけを見れば割合は決して大きくないものの、USBCはこの結果を重く受け止めている。報告書では、今後USBC主催大会において「73D」を実戦環境での最低硬度基準として導入する方針が示された。
2027年には約80個のボールが失格になる可能性も
USBCは、2027年大会では149日間の開催期間中に約6,840個の低吸油性ボールが検査対象になると予測している。
今回と同じ1.1%の割合で73Dを下回るボールが見つかった場合、約77個のボールが大会から除外される計算になる。さらに、もし基準を74Dに引き上げれば469個、75Dまで引き上げれば1,855個ものボールが使用不可になる可能性があるという。
つまり、わずか1ポイントの基準変更が競技環境全体に大きな影響を与えることが、今回の調査から浮き彫りになった。

すでに580個以上の「使用不可ボール」が発見
今回の調査では、基準を満たしたボールだけでなく、大会会場に持ち込まれた使用禁止ボールについても分析が行われた。
その結果、580個以上の使用不可ボールが確認され、その中には2022年8月以前に発売された古いウレタンボールや、もともと低硬度で設計されたモデルが含まれていた。対象モデルは110種類に及び、そのうち23モデルでは73D未満の個体が確認されている。
一方で、古いウレタンボールのすべてが規定以下になっているわけではなく、多くのモデルは依然として73Dを上回っていることも判明した。
ボールは今も柔らかくなり続けているのか
報告書の中で特に注目されるのが、「ボールは今も柔らかくなり続けているのか」という検証だ。
USBCは、長年にわたって追跡調査を行っている人気モデル174個を対象に、工場出荷時のデータと実際の使用後データを比較した。その結果、最低硬度は63.19Dを記録。過去最低値を更新しており、「使用によってボールがさらに柔らかくなっている可能性がある」と結論づけている。
ただし、硬度低下には限界が存在する可能性も示されている。最も古い個体が必ずしも最も柔らかいわけではなく、一定の使用を経ると硬度の低下が落ち着く傾向も見られたという。
ボウリング界は新たな時代へ
今回の研究は、単なるデータ収集にとどまらない意味を持っている。
USBCは、今後の大会運営に向けて73D基準の導入や新たな検査手順を発表する予定であり、低吸油性ボールを取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。
長年議論が続いてきたウレタンボール問題は、感覚や印象論ではなく、数千個規模の実測データによって新たな局面へと進み始めた。今後、メーカーや選手がどのように対応していくのか、世界のボウリング界全体が注目している。