スウェーデン代表として長年世界の舞台で戦ってきたポントゥス・アンダーソンが、今度はアジアで新たな挑戦を始めている。30歳で競技生活に区切りをつけたアンダーソンは現在、香港代表のコーチとして若手選手の育成を担当。つい数カ月前まで自らメダルを懸けて投球していたトップボウラーが、レーンの後ろから選手たちの戦いを見守る立場へと大きく転身した。
アンダーソンは約13年間にわたり国際大会でスウェーデン代表として活躍し、ユース、シニアの両カテゴリーで20個以上のメダルを獲得。今年2月、まだトップレベルで戦える実力を持ちながら、競技生活から退く意向を明らかにしていた。その理由の一つとして挙げていたのが、自分自身が結果を残すことだけでなく、他のボウラーを成長させることにも大きな喜びを感じるようになったことだった。
当初描いていた第二のキャリアは、現在とは異なるものだった。アンダーソンは競技引退後、カタール・ドーハへ移住し、同国のユースチームを指導する予定だった。しかし、その計画は実現せず、代わって浮上したのが香港からのオファーだった。契約がまとまったのは5月最終週。話が決まると、ほとんど間を置かず香港へ移住したという。
現在は香港代表ヘッドコーチのフランソワ・ロウをサポートしながら、シニア代表の指導に携わっている。ただし、アンダーソンに託された最大の役割はエリートユース選手の育成だ。「ユース育成で一番大切なのは、若い選手たちをより良いボウラーにすること。どうやってそれを実現するかが私たちの挑戦です」と語り、香港スポーツインスティテュートや香港ボウリング界が持つ充実した環境を生かしながら選手育成に取り組んでいる。
そして、新米コーチとして迎えた最初の大舞台ですでに結果も出始めている。インドネシア・ジャカルタで開催されている『第25回アジアジュニアボウリング選手権』では、男子シングルスでディラン・ラム・ノク・ヒムが銀メダルを獲得。さらに女子ダブルスでもタヴィア・ウォン・ツェ・チンとロー・ワイ・チンのペアが銀メダルに輝き、香港勢が表彰台に立った。
アンダーソンにとって、その光景はこれまでとはまったく違うものだった。数カ月前までなら、自らボールを手にしてメダルを争っていた。しかし今は、レーンの後方から選手を見守り、アドバイスを送りながら結果を待つ立場。ジャカルタでは香港の若手たちがメダルを争う姿を前に、落ち着かない様子でレーン後方を歩き回っていたという。
香港へ移住してから2カ月以上が経過し、新しい生活にも少しずつ慣れてきた。それでも「もうスウェーデンには住んでいないんだと、何度も自分に言い聞かせなければならない」と、母国を離れた生活にはまだ不思議な感覚が残っているという。一方で、「ここでの時間を本当に楽しんでいますし、香港代表を指導できることはとても光栄です」と、新天地での生活に充実感を示している。
文化や人との距離感、生活環境など、スウェーデンとは大きく異なる部分も多い。気候もその一つだが、暑さについてはむしろ気に入っているという。そして国際大会を転戦していた選手時代から解放され、思わぬ喜びも生まれた。「もう重いバッグを全部運ばなくていいのが本当に嬉しい!」と冗談交じりに語っている。
自分の一投でメダルをつかむ立場から、選手たちの一投を見守る立場へ。13年間の国際競技生活に区切りをつけたアンダーソンは、遠く離れた香港で自身の経験を次世代へ伝え始めた。すでにアジアジュニア選手権で若手がメダルを獲得するなど、新たなキャリアは上々のスタートを切っている。世界で戦ってきたスウェーデンのトップボウラーが、今度は指導者として香港、そしてアジアのボウリング界にどのような選手を送り出していくのか注目される。