スペインのボウリング界に悲しい知らせが届いた。カンタブリア地方に伝わる伝統的なボウリング競技『ボロ・パシエゴ』のトップ選手として活躍していたマヌエル・レカンダ・オルティス氏が9月18日、交通事故により亡くなった。41歳だった。
ボロ・パシエゴは、日本で一般的な10本のピンを倒すテンピンボウリングとは異なるものの、ボールを投げてピンを倒し得点を競うスペインの伝統的なボウリング系競技の一つ。スペインではテンピンボウリングとともに、こうした伝統的な「bolos」の競技もスペインボウリング連盟の競技体系に含まれている。
カンタブリア地方ではボロ・パシエゴをはじめとした伝統競技が現在も受け継がれ、リーグ戦や地域選手権などが開催されている。つまり今回亡くなったレカンダ氏は、地域に伝わる遊びの愛好家ではなく、現在も公式競技として続くスペイン独自のボウリング文化を代表する現役トップ選手だった。
現地メディアによると、事故はスペイン北部カンタブリア州カルテス付近の高速道路A-67で発生した。ごみ収集車が走行中に追い越しを行っていた際、何らかの原因で運転手が車両のコントロールを失い横転。その後、車両は複数回転したという。他の車両との衝突はなかったとされている。
事故では車に乗っていた2人が死亡し、そのうちの1人がレカンダ氏だった。もう1人は47歳のマルティン・ラビン氏で、事故原因について詳しいことは分かっていない。
レカンダ氏は『Peña Alto Pas』に所属し、現役の地域王者として活躍していた。事故がなければ、わずか数日後にサン・ペドロ・デル・ロメラルで行われる大会でタイトル防衛に挑む予定だったが、今回の訃報を受けて大会は中止された。
競技人生でも数々の実績を残した。最高カテゴリーのリーグで長年プレーし、リーグ優勝を経験したほか、Peña Alto Pasの一員としてカンタブリア杯を4度制覇。個人でも1部地域選手権を3度制し、ペアの地域選手権でも2度優勝するなど、カンタブリアのボロ・パシエゴ界を代表する存在だった。
競技成績だけでなく、ボロ・パシエゴの普及にも積極的に関わっていたという。特に自身の娘たちにも競技の魅力を伝えており、2人は事故のわずか数日前に、それぞれ地域選手権のジュニアカテゴリーで準優勝していた。
突然の訃報を受け、スペインボウリング連盟も追悼の声明を発表した。連盟はレカンダ氏を「地域王者であり、ボロ・パシエゴを代表する選手の一人」と紹介し、その突然の死に「深い悲しみ」を表明。妻や娘たちをはじめ、両親、姉妹、親族、友人、そして所属していたPeña Bolística Alto Pasの関係者へ哀悼の意を伝えた。
また連盟は、同じ事故で亡くなったマルティン・ラビン氏にも言及し、その家族や関係者にも追悼の意を表している。
レカンダ氏の死は、スペインのボロ・パシエゴ界だけでなく、競技を統括する連盟にとっても大きな喪失となった。現役王者としてタイトル防衛を目前に控え、次世代へ伝統競技をつなぐことにも力を注いでいた41歳の突然の死に、現地のボウリングコミュニティから悲しみの声が広がっている。
ボウリング界では今月、米国でも悲しい交通事故が起きた。USA BowlingやJunior Goldなどユースボウリングの現場を長年支えてきたザック・バートン氏が、妻キャサリン氏とともに9月5日に発生した交通事故で亡くなっている。
競技する国もボウリングのスタイルも異なるが、ボウリングに関わり、次の世代へその文化をつなげてきた人物が相次いで交通事故で命を落とした。
タイトル防衛を目前に控えながら、41歳という若さで突然この世を去ったレカンダ氏。その死は、一人の現役王者を失っただけではなく、長い歴史を持つスペインの伝統的なボウリング文化にとっても大きな悲しみとなった。