皆さん、こんにちは。JPBA女子プロボウラーの堀井春花です。今回は、私自身が今でも忘れることのできない経験を通して、「たった1点」の重みについて書いてみたいと思います。ボウリングを続けていると、わずかな差が結果を大きく左右する瞬間を何度も経験します。
スポーツの世界では、ほんのわずかな差が勝敗を分けることがあります。ボウリングも同じです。その差で予選を通過する選手がいれば、あと一歩届かず大会を終える選手もいます。数字だけを見れば小さな差ですが、その結果が選手の気持ちや、その後の競技人生を大きく変えてしまうこともあります。
私自身、その重みを今でも忘れることができません。
忘れられないのは、2024年の『大岡産業レディース[THE OPEN]トーナメント2024』です。この大会では28名が予選を通過し、私は12ゲームを投げ終えた時点で、28位だった松永裕美プロとトータルスコアが同点でした。
しかし、順位を決めるローハイ(ハイゲームとローゲームの差)の結果、私は29位。スコアは同じだったにもかかわらず、松永プロは決勝ラウンドへ進み、私はその日で大会を終えることになりました。この時初めて、「あと少し」の差がどれほど大きな意味を持つのかを痛感しました。
大会が終わったあと、頭の中に浮かんできたのは最後の1投ではありませんでした。
「あのスペアが取れていれば……」
「あの1投のミスがなければ……」
そんな思いが何度も頭をよぎり、試合中の一球一球を鮮明に思い返していました。勝負を分けたのは最後のフレームではなく、12ゲームを通して積み重ねた一つひとつの判断や投球だったのです。
ボウリングは、ストライクを一番多く出した人が必ず勝つ競技ではありません。どんなトッププロでもミスはしますし、一度も失投をしない試合はほとんどありません。
だからこそ大切なのは、「ミスをしないこと」ではなく、「ミスを引きずらないこと」だと私は思っています。一度の失投を次のフレームまで持ち込まず、気持ちを切り替えて次の一投に集中する。その積み重ねが、長いゲームでは最後に大きな差となって表れます。
あの日の悔しさは、今でも鮮明に覚えています。同点でありながら予選を通過できなかったという現実は、簡単に受け入れられるものではありませんでした。
それでも、この経験があったからこそ、以前よりも一投一投を大切に考えるようになりました。「まだ序盤だから」「これくらいなら取り返せる」と思ってしまう一球が、最後には順位を左右することを身をもって知ったからです。
試合中は、どうしても目の前のストライクやミスに意識が向きがちです。しかし、1フレーム目のオープンフレームも、10フレーム目のスペアミスも、最後にはすべて同じスコアとして積み重なります。だからこそ、ボウリングには「無駄な1投」は存在しません。
ほんのわずかな差で笑う人がいて、あと一歩届かず涙を流す人もいる。その厳しさがあるからこそ、最後まで何が起こるか分からないボウリングは、本当に奥が深いスポーツなのだと思います。
私は今でも、試合で苦しい場面になると2024年のあの日を思い出します。あの経験があるからこそ、「この1投を大切にしよう」と自然に思えるようになりました。負けた経験は決して気持ちの良いものではありませんが、その悔しさから学べることは、勝った時以上に多いのかもしれません。
これからも、結果に一喜一憂することはあるでしょう。それでも、あの日の経験を忘れることなく、一球一球を大切に積み重ねていきたいと思います。
そして、このコラムを読んでくださった皆さんにも、「あと少し」の積み重ねが結果を変えることを感じてもらえたら嬉しいです。ボウリングは、一投一投が未来につながるスポーツ。その魅力を、これからもレーンの上で伝え続けていきたいと思います。